M-1グランプリ2022個人的な感想の話

M-1グランプリ2022、見ながら書いた一言ツイートを元に、感想、個人的評価をまとめた。

M-1グランプリは「自分と世間やプロ芸人の笑いのセンスの差を確認し、喜んだりズレを認識してしんどい気持ちになったりする機会」だと思っているのだけど、今回は自分の感覚と審査員の感覚が比較的一致した印象があって、ひとまずホッとしている。

 

■1組目:カベポスター

 

1組目にふさわしい丁寧なボケとツッコミの王道漫才。元々自分は「王道漫才」があまり刺さらないということもあって、面白さは感じたものの「王道」の枠を超えた感じがなく、個人的にはそこまで刺さらなかった。

一組目に王道が来たことで、基準にしやすいという点ではよかったと思う。

 

■2組目:真空ジェシカ

 

変化球。現実(シルバー人材センター)を舞台に設定しながら狂った世界を見せる手腕は真空ジェシカの本領発揮感。

わかりやすいボケツッコミではなく、普通の会話の流れのひとつと認識させた台詞を「シルバー川柳?」と戻って活用する仕掛けに技術を感じた。

 

■3組目:ロングコートダディ

 

センターマイクの前に並ぶという王道の位置関係を設定に活かし、奥行きを演出(松本人志が「縦の漫才」と表現)した点がよかった。

ダブルボケの応酬で手数も多く、満足度は高かったが、ネタが走って4分という持ち時間には届かなかったことを審査員の指摘で知りビックリ。

 

■4組目:オズワルド

 

敗者復活枠。やはり単に王道なだけでは自分個人としては面白くてもそこまで刺さらないのだなと再確認してしまった感。

オズワルドのフォーマットを既に知っていた点も「もうワンポイントほしい」という物足りなさを感じる結果になってしまったかなと思う。

 

■5組目:さや香

 

王道漫才のフォーマットながら、ボケツッコミのその場のワンセットの仕掛けのはずの「おとんの年齢」が伏線になって後に再び活きてくる展開に工夫を感じてドキッとした。

個人的にはそこまで好みの漫才ではないけど、M-1グランプリという場の評価基準では王道漫才の正統進化形として高得点もありそう、と感じた(実際に最終決戦進出)

 

■6組目:男性ブランコ

 

狂った設定ながら、わりとすぐに「このあとどうなるか明らかにわかる展開」を繰り返し見せて笑いにする胆力がすごかったが、自分はそこまでは刺さらなかった 。

「もう2機失ったんですけど」 という表現など、現実ならエグい状況を軽さに落とし込んで笑いにする淡々と冷静なツッコミがよかった。

 

■7組目:ダイヤモンド

 

「まともじゃない人(のボケ)」に「まともな人(のツッコミ)」が入る王道漫才。

途中から「まともなほうがまともじゃないほうに言いくるめられてしまう流れ」に期待してしまったためか(一瞬その展開も見えただけに)もうひとつ工夫があればと感じた。

 

■8組目:ヨネダ2000

 

基本的に王道の掛け合い漫才が続いた中で、リズム漫才も漫才だったと気づかせてくれた。

何が面白いのか上手く言語化できないがただただひたすらに面白い、というタイプの漫才は嫌いじゃないけどM-1グランプリの評価としてはどうなるか。

個人的には審査員の点数が想像以上に高かったのが驚きだった。

博多大吉が「配慮で(ネタの)説明したのかもしれないけど、そのまま突っ走ってほしかった」という指摘をしていて「あ、そこで自分は一瞬異次元の世界から現実に戻された(冷めてしまった)んだ」と気づけた。

 

■9組目:キュウ

 

設定演出の都合上、ツッコミ側がボケのツッコミポイントに気づいてツッコミを入れるまでの時差があり、見てる側にも一連のボケツッコミを理解するまでの時差があることを考えると、テンポが悪く感じた。

 

■10組目:ウエストランド

 

どんどんやべえ悪口とイカれた思想が出てくる展開にワクワクと笑いが止まらない。

悪口系のお笑いは賛否両論あると思うけど、それが悪口だと認識したうえで、それでも思わず共感して笑えてしまうお笑い、必要だと思う。

富澤たけしが「みんな共犯」と評していたのが印象的だった。

審査員も現代でこれを評価する難しさはあったと思う。

 

■最終決戦:ウエストランド

 

くじ順で実質2連続の流れになった幸運もあるとはいえ、決勝と同じフォーマットを使うことで導入を省き、決勝の熱量を冷ますことなくそこを起点にしてさらに駆け上がってみせた凄さ。

このネタのフォーマットを考えた時点で勝ちだったかもしれない、これは優勝ある、とこの時点で感じていた。

 

■最終決戦:ロングコートダディ

 

決勝で見られた「王道漫才からのもうひと工夫」が最終決戦ではほとんど見られず残念。ウエストランドが凄すぎたこともあり、正直あまり印象に残らなかった。

 

■最終決戦:さや香

 

さや香の最終決戦ネタも、決勝で見られた「戻ってツッコむ伏線」がなく、その場その場のボケツッコミに終始してしまったように感じた。

ここでもまたその話をしてしまうが、世界観や設定の導入不要で熱量そのままでやれたウエストランドが強い。

 

■優勝:ウエストランド

 

個人的には、他のコンビもそれぞれ良さがあり、単純にネタ勝負だけなら甲乙つけがたいが、熱量を冷ますことなくそのまま駆け上がったウエストランドの優勝は納得感しかない。

平場でどうなるか、ウエストランドの悪口ネタが今まで以上に急激にメジャー化してどうなるかという不安はあるけど、それはこれからの話だと思う。